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所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会

2024.12.05Story

#大地

苗場山麓と秋山郷の絶景を歩く!

秋山郷を流れる中津川に沿って、このほど中津川左岸散策道(トレイル)がオープンした。河岸段丘と溶岩流の重なる台地の崖の上を歩くコースは、豊かな自然と絶景に恵まれ秋山郷の生活と歴史を体感できる道のりでもある。その見どころとお勧めスポット、そしてトレイルの持つ意外な意義とその可能性をレポート!

──悠久の大地と自然の営みを体感する、中津川左岸散策道(トレイル)の醍醐味

急流である中津川によって浸食され、なおかつ台地の隆起によってできた段丘の上を歩く中津川左岸散策道(トレイル)が完成した。秋山郷の見玉地区にそびえる石落しの上の絶景を歩く(所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会)

秋山郷を流れる中津川に沿って、このほど中津川左岸散策道(トレイル)がオープンした。河岸段丘と溶岩流の重なる台地の崖の上を歩くコースは、豊かな自然と絶景に恵まれ秋山郷の生活と歴史を体感できる道のりでもある。その見どころとお勧めスポット、そしてトレイルの持つ意外な意義とその可能性をレポート!

数百メートルの崖の淵を歩く珍しいトレイル

群馬県の野反湖を源流として、苗場山麓を経て信濃川に流れ込む中津川。全長約35㎞の一級河川で、その途中には日本百秘境の1つである秋山郷がある。水源から信濃川合流地点まで、中津川の高低差は1000m以上あるため、平均勾配は約30分の1にもなるという。ちなみに急流で知られる富士川とほぼ同じ勾配だ。

「中津川の流れの速さは急流が多い日本の河川のなかでもトップクラス。激しい浸食作用と地殻変動によって、9段とも言われる津南の河岸段丘やその奥の秋山郷のV字渓谷が形づくられました」と話すのは津南町観光地域づくり課の石沢久和さんだ。

下から上に流れているのが中津川。上で左から右に流れる信濃川と合流するが、両岸に河岸段丘が何段にもわたって形成されているのがわかる(所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会)

その中津川の左岸に、このほど中津川散策道がオープンした。津南町の石坂集落のお堂脇から始まり、長野県栄村の矢櫃村跡までをつなぐおよそ27㎞のトレイルだ。石沢さんの案内で、その一部を歩いてみることになった。

まずは車で石坂集落のお堂脇に向かう。国道117号線から405号線に入り、中津川沿いを上流に向けて走る。5分ほどのところで右に曲がり、中津川に掛かっている石坂橋を渡る。
車窓からは段丘面の1つである沖ノ原台地の崖が衝立のように迫って見える。高さは200mほどあるらしい。その崖をまるでよじ登るように蛇行しながら車は上がっていく。みるみる対岸の集落がパノラマのように眼下に広がり、素晴らしい眺望だ。

「昔、石坂集落の子どもたちが火のついたたいまつを持ってこの崖のつづら折りの坂を上がり、上の神社のお堂に奉納する火祭りがありました。石坂集落の子どもが少なくなった後は中津小学校の生徒たちによって引き継がれましたが、それも20年くらい前になくなってしまいました」と石沢さんが説明してくれた。

当時、歩いてのぼったつづら道の痕跡がかすかに残っているが、ほとんど使われることはないという。私たちは車でお堂脇まで上がり、いったん車を降りた。「ちょうど先程下から見上げていた段丘の上の縁の部分に立っていることになります。ところどころの木々の隙間から、下の集落が見えますよ」。

石沢さんに促され、木々の間から東の方向に目をやれば崖の遥か下に中津川が流れ、その対岸にミニチュアのように集落が点在している。いっぽう北から西に目をやると沖ノ原台地の平坦な畑が眼前に広がっている。まるで二つの世界が数百メートルの高さの崖で切り取られて別々に存在しているような錯覚に陥る。

30万年前の溶岩流の上を歩く

再び車に乗り込むと、私たちはさらに上流の方を目指した。道なき道を進む。先ほどまでの平坦な段丘面とはうってかわって、起伏の激しい道だ。
「これは約30万年前に噴火した苗場山(2,145m)の溶岩流です。段丘の上に覆いかぶさるようにここまで流れてきたのです」と石沢さんは説明してくれた。

溶岩流は膨大な量で、あっという間に中津川も埋め尽くした。ただし、30万年の時間を経て、急流は再びその溶岩流の固まりを切り裂き、深い渓谷を刻んだのだ。段丘の上に溶岩流が乗った形で削り取られた崖の高さは300mにも達するという。「中津川左岸散策道(トレイル)はその溶岩流の崖の淵を歩いていく形になります」(石沢さん)

石坂お堂から約3㎞ほど上流に遡った龍辰峰という場所で車を降りる。ちょっとした広場になっていて、そこから眼下が眺望できる。「ほら、あそこに小さな池のようなものが見えるでしょう? あれがさっき私たちがいた見玉公園です」と石沢さん。先ほど見玉公園から対岸にそびえる高さ300mの柱状節理の絶壁を眺めたばかりだ。

今回歩いたスタート地点である龍辰峰からは、眼下に見玉集落と公園が見下ろせる(所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会)
見玉公園のビュースポットから見上げる苗場溶岩流による柱状節理の岩壁「石落し」。覆いかぶさってくるような圧倒的な迫力だ

柱状節理とは溶岩が急速に冷えて固まったために縦に柱状に割れ目ができた岩石のこと。苗場山からの溶岩流が作り上げたその雄大な岩の造形は「石落し」と呼ばれ、日本のグランドキャニオンとも称されている。見玉公園から見上げたその絶壁は、まるで巨大な衝立のように立ちはだかり、圧倒的な存在感。今、まさにその絶壁の上に立っていると思うと、足元がゾクゾクするような不思議な感覚に陥る。

その龍辰峰から、約1.5㎞先の穴藤の峰にむけてスタート。いきなり「熊に注意と」の看板があるが、実際どのように気を付けたらいいのか? やはり単独ではなく出来るだけ大勢で、わいわいがやがやと話しながら歩くのがよいそうだ。人の気配がすれば熊も避けて通るため、出会い頭の遭遇は避けられる。

木立の中に分け入っていくと、そこには人一人が通れる幅の道が森の中に続いている。踏み固められている感じからみて、昔からあった道のようにも見える。「中津川左岸散策道(トレイル)は昔の周辺の集落の人たちが生活用に使っていた古道を利用し、ところどころ新たな道を作って一本につなげました」と石沢さん。かつて集落で暮らした人たちが歩いた道かもしれない。時間と空間を超え、山道を踏みしめる昔の人たちの息遣いが聞こえてきそうだ。

30万年の年月を経て作り上げられた豊かな森

周囲は広葉樹や針葉樹の入り混じった森で、左手は崖になっているため木立の先には明るい空が抜けて見えている。とはいえ木々が並んでいるので、崖沿いに歩いている感じはしない。右手はそれに対して深い森が鬱蒼と奥まで続いている。苗場山から流れ出した溶岩は最初こそ草木のない火星の表面のような状態だっただろう。それが40万年の長い長い年月を経て、現在の豊かな緑の森と変わったわけだ。

針葉樹と広葉樹の混交した森を歩く。すでに踏みならされた道が続いていて、歩きやすいコースだった。
ところどころの倒木などに苔がむしていて、水にぬれ美しく輝いていた。

悠久の時間で蓄積された自然のエネルギーを存分に体全体で浴び、感じることができるのが中津川左岸散策道(トレイル)の醍醐味だろう。意外に平坦で歩きやすい道が続く。ただし、石沢さん曰く、今回歩いた龍辰峰と穴藤の峰の間が一番歩きやすいコースだそうだ。全27㎞のコースのなかにはかなり起伏の激しいところもある。ちなみにコースの標高差を見ると、石坂お堂脇の入口がもっとも低く標高約500m、もっとも高い鳥甲牧場分岐で約1100m。なので600mの高低差があることになる。

「けっして全体的には楽なコースだとは言えないと思います。ただ、極端に歩きにくい箇所はないので、上級者向きというわけでもありません」と石沢さんは説明する。トレッキングが好きな人にとっては適度な負荷がかかる、歩きがいのあるトレイルだということは確かだろう。

なによりの楽しみは時折ビュースポットや木々の切れ目から望める素晴らしい眺望だ。今回の龍辰峰から穴藤峰までの短いコースのなかでも、時折中津川沿いの見事な河岸段丘のパノラマを展望することができた。「眺望を楽しみながら歩くことができるのが本トレイルの魅力でしょう」と石沢さんは話す。

コースのところどころにビュースポットがあり、中津川と秋山郷の絶景を眺めることができる

ブナ林を抜けて苗場山が見える絶景スポットに!

もう1つお勧めしたいポイントがブナ林を通り抜けるコースだ。穴藤の峰から上流の結東地区方面までの約7~8㎞はブナ林が続いている。このあたりは標高が900mほど。ブナの生育にはちょうど良い環境だ。ちなみにこの周辺は毎年3mを超える積雪が当たり前の豪雪地帯なので、標高300mほどの比較的低地からブナ林が見られることでも知られている。

ブナ林は極相林と呼ばれている。極相林とは自然に任せておくと最終的に行き着く林のことだ。まだ木が生えていない土地には、まずツツジなどの陽樹の低木から生え始める。その後シラカバなどの高木が生えて優性になる。その後、少ない日照量で育つ陰樹の低木が生え始め、最終的にはブナやミズナラなどの陰樹の高木に取って代わられる。

ブナの森に足を踏み入れたことがある人はわかると思うが、ブナ林には他の木とくに低い灌木は生えていない。整然とブナが直立し、足元にはブナの落ち葉が絨毯のように敷き詰められている。だから他のどんな森にくらべても美しく、清浄な空気が漂っている。

美しいブナ林を歩くだけで、森の清浄な空気で体の毒素がどんどん抜け落ちていくような錯覚を覚える

美しいブナ林のトレイルを抜け、さらに3㎞ほど上流に歩くと、こつ然として眼前が開ける。前倉トド展望台、通称「山の展望台」だ。見晴るかす秋山郷の峰の連なり。正面には日陰山(1,993m)の頂きが見えている。その右手向こうには平らな皿を伏せたような独特の形の苗場山が威容を誇っている。昨日までの雨が上がり、澄み渡った空気のなか、とぎれとぎれの雲をまとったその姿は、思わず見入ってしまうほどの美しさだ。

ありがたい事に、木製の大きな桟敷が張り出しているので、座って体を休めながらその絶景を思う存分楽しむことができる。「いやぁ、これは最高に気持ちがいいですね」。取材に同行したスタッフも思わず声を上げる。季節は10月初めで紅葉にはまだ早いが、すでに山裾のあちこちが黄色く色づき始めている。全山紅葉の景色はどれほどだろうか? 想像するだけでも気持ちが高まってくる。

ブナ林を抜けて少し行ったところにこつ然と現れる前倉トド展望台(山の展望台)。大きな木製の桟敷に座って、ゆっくりと山並みを眺めることができる。中央の平べったい山頂の山が苗場山。その左が日陰山だ。右側に座っているのが今回コースを案内してくれた津南町観光地域づくり課の石沢久和さん

ダイナミックな自然の造形に、悠久の時間の蓄積を感じる

それにしても、苗場山の平らな山頂はどうしてあのような形になったのか? まさか山頂がそっくり噴火で吹き飛んだ? 「いえいえ、おそらくですが粘度が低い溶岩が流れ出したために、盛り上がることなくあのような形になったのだと考えられています」と石沢さんが説明してくれた。サラサラの大量の溶岩が溢れ出し、なだらかなまま冷え固まり山頂となったわけだ。

ちなみに苗場山が噴火したのは約30万年前。それよりさらに昔の約80万年前には、ちょうど中津川を挟んで苗場山に正対するように並ぶ鳥甲(とりかぶと)山(2,037m)が大爆発し、同じように溶岩流が麓に流れ出している。

鳥甲山、苗場山などの相次ぐ噴火と溶岩流の重なり。大地の隆起と中津川信濃川などの急流な河川による浸食でできた河岸段丘。そして秋山郷の深いV字渓谷。この地域はまさにダイナミックな地殻の変動と、雨や雪、河川などの自然の力がぶつかり、相克しながら形作られてきたものだ。それらは悠久の時と共に刻まれた、自然の織り成す壮大な作品群だと言ってもいいかもしれない。

この展望台の約2㎞上流が最高地点の鳥甲牧場分岐で、その先は一気に急な下り坂となる。散策道終点の矢櫃の川原まで約5㎞の道のりとなっている。1日で全27㎞の踏破は難しいが、途中結東の集落の宿泊施設で一泊して2日がかりであれば十分可能だろう。あるいは今回取材で歩いたように、一部のコースを歩くだけでも、大いに中津川左岸散策道(トレイル)を楽しむことができる。

コースの最奥の最終地点である矢櫃の川原(所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会)

たとえば逆巻地区のブナ林から歩き始めて、前倉トド展望台をゴールにするコースなどはお勧めだろう。その間10㎞弱、時間にして約5時間。朝出発すると展望台にはちょうどお昼くらいに到着する。秋山郷の山々、苗場山の山容を眺めながらゆっくりと食事をする。まして紅葉の時期などなら、最高の贅沢ではないだろうか。

苗場山を中心にした複数トレイルの壮大な構想が!

そもそも、この中津川左岸散策道(トレイル)の構想は10年以上前に遡る。最初の構想から関わってきた津南町教育委員会の佐藤雅一さんは話す。「このトレイルはたんに中津川の左岸だけを楽しむものとして考えたわけではありません。すでに存在する信越トレイル、雪国観光圏7市町村を結ぶスノーカントリートレイル、群馬県が整備を進めているぐんま県境稜線トレイルなどを結び、苗場山を中心とした大きな環状ルートの1つとして考えています」

信越トレイルとは長野と新潟の県境に連なる全長110㎞のロングトレイルだ。長野県の野尻湖近くの斑尾山から黒岩山、黒倉山へと続く尾根を伝い、三方岳、天水山と続く関田山脈の尾根伝いを歩く。さらに栄村、津南町を抜けて結東から秋山郷に入り、中津川沿いをのぼって小赤沢から苗場山に至る。行程にはかつて信越と越後を結んだ交通の要衝である16もの峠が含まれ、この地域の人々の歴史と大自然を体感できるコースとなっている。

スノーカントリートレイルとは雪国観光圏である新潟県魚沼市、南魚沼市、十日町市、湯沢町、津南町、長野県の栄村と群馬県のみなかみ町の7市町村を結ぶ300㎞を超える超ロングトレイルだ。松之山から秋山郷の右岸ルートを通り、苗場山を経て三国峠を越える。群馬県の上毛高原で北上し、今度は清水峠を越えて湯沢から六日町、小出を経て十日町、そして松代から松之山に戻る広大な環状トレイルとなっている。

ぐんま県境稜線トレイルは群馬・新潟・長野の各県境を結ぶ稜線100㎞を主要ルートとするトレイルだ。みなかみ町の土合から嬬恋村鳥居峠を結び、谷川岳や四阿山といった日本百名山、二百名山がひしめく。また沿線にはみなかみ18湯、四万温泉、草津温泉、万座温泉など有名な温泉があり、それらを楽しみながら歩くことができるロングトレイルとなっている。

「中津川左岸散策道(トレイル)はこれらの既存トレイルを結び付けるちょうどハブのような位置関係にあります。今回これを整備することで、各トレイルがさらに有機的に結びつき、よりトレッキングの楽しみと深みを増すことができるようになったと思います」と、佐藤さんは胸を張る。実際に今回、中津川左岸散策道のオープンに合わせ、このエリアを走るスノーカントリートレイルの一部区間が供用された。

中津川左岸トレイルと周辺のさまざまなトレイルの関係を図示する佐藤雅一さん

中津川左岸トレイルの位置関係からすると、その中心は苗場山ということになる。苗場山を中心にしてスノーカントリートレイルの環状線が走り、信越トレイル、ぐんま県境稜線トレイルなどがそこに絡むことで、より多くの人たちに開かれたトレイル網として機能する。

佐藤さんは今後の課題も含めてこう話す。「今回中津川左岸散策道(トレイル)が開通したとはいえ、その他のトレイルとの関係としての全体的な整備はまだまだこれからの話になります。ただ、それぞれの地域がバラバラで開発するのではなく、大きく鳥瞰して見ることで地域の価値はより高まる。20年、30年後を見据えての計画が出来たらいいですね」

秋が深まると全山紅葉の絶景が楽しめる。写真は雪化粧の苗場山と麓の小赤沢集落(所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会)

自然と歴史、人々の生活……さまざまなストーリーが‟道“にはある

今でこそ、私たちは高速道路や新幹線によって県境を越えさまざまな地域へあっという間に移動することができる。一見便利で豊かに見えるが、よく考えてみると昔の人たちが峠を越えていた道は、現代の道路や鉄道よりもはるかに緻密に細かく張り巡らされていたはずだ。

その道を人々が移動することで、その土地土地の自然を体感し、集落の人々との交流を通じてその文化や歴史を知ることになる。それらがまた道を通じて各地に伝搬していく。それがまた新しい文化と歴史を作り出していく……。

「土地や地域ごとに蓄積されたストーリーがあります。それこそが資産であり、その資産を生かしていかにその土地の価値を高めるかが大事だと思います」と佐藤さん。観光という視点でもこれまでのイベント観光を脱却し、地域のストーリーと資源を生かした新たな観光の視点と価値観が求められると話す。

「たとえば越後田中駅や津南駅に列車が着くたびに、毎回4、5人でもリュックを背負った人たちが降りる。その人たちが秋山郷を目指し中津川左岸トレイルを歩く。その光景が日常的になったら、本トレイルが本当に成功したと考えてよいと思います」(佐藤さん)

大きな資本と結びついた巨大リゾートやイベント観光で一気に人を呼ぶ時代はもう過去のもの。これらの観光は土地の歴史や文化、自然という価値=ストーリーを楽しむものへと変化する。だからそれぞれの思いを抱いた人たちが個別に訪れるのがこれからの観光となっていく。

佐藤さんは「同時に個別ニーズに細かく対応するべく、その土地に詳しい専門のガイドがたくさん必要になります」と指摘する。それが高齢化の進む地域の問題を解決することにもつながると話す。

「ちょうど定年を迎えた人が自分の土地をあらためて勉強し、深く理解することでその価値を知る。ガイドになることで定年後の有意義な仕事、役割を持つことができるし、何より体を動かし人と触れ合うので、老け込む暇などなくなります」。トレイルガイドの養成は観光を支えるだけでなく、その地域の高齢者層の生きがいと健康にも大いに寄与するというわけだ。

中津川左岸の27㎞の散策道は数あるトレイルの中では決して長いものではない。だがその持つ意味と意義は大きい。何よりこの秋山郷という地域そのものが、深く長い歴史と大自然の営みが凝縮されている場所である。「楽しみ方は人それぞれ。各人のテーマで歩くことができるのが中津川左岸散策道の魅力でしょう」と佐藤さん。

鈴木牧之が歩いた江戸時代の秋山郷の歴史を辿りながらあるくのもいいだろう。さらに時代を大きくさかのぼれば、縄文時代の人々の暮らしに思いを馳せることもできる。あるいは明治以降の近代なら中津川流域は電源開発が盛んだった土地で、日本の近代の様々な課題やエネルギー問題を考える場所にもなり得る。

自然環境の豊かさはすでにお話しした通り。中津川左岸トレイルは多くのテーマとストーリーが複層し、それぞれの興味に従って存分に楽しむことができる、豊かで魅力的なコースなのだ。

紅葉の秋山郷を流れる中津川。穴藤の峰からの眺望(所蔵/苗場山麓ジオパーク振興協議会)

ちなみに初心者にも歩きやすいコースが多いとはいえ、よく道を知っていないと所々で迷う場面もある。できれば地元ガイドと一緒にその解説を聞きながら歩くことをお勧めしたい。

ガイドの依頼・お問い合わせ

津南観光協会 ℡025-765-5585

料金目安 半日(4時間程度)6000円、1日(6時間程度)8000円
※ガイド1人で10人ほどまでのツアーに対応。
※上記料金は依頼者の車またはバスに同乗した場合
※山岳・トレッキングガイドは別途料金。

2週間前までの予約が原則

その他詳細は上記環境協会まで。

本間 大樹

ほんま たいき|1963年、新潟市生まれ。早稲田大学を卒業後、東京の出版社で単行本や雑誌の企画・編集に携わる。2007年独立し、フリーの編集兼ライターとなる。2012年、Uターンして新潟市の実家に拠点を移しながら活動を続ける。現在、単行本の執筆、地方新聞の企画記事作成と共に、新潟市安吾の会に属し、企画運営を行いながら様々な文化活動を行う。主に新潟・佐渡を中心にした文化・歴史の取材、記事作成に携わりながら、あらたな地域の可能性を探る。

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